未経験で1人目広報・PR担当者になったら、社内外の情報収集と意見交換からはじめよう。想いと客観性のバランスが発信のポイント~株式会社YOUTRUST 広報・PR 緒方祥子さん~
未経験から社内の1人目広報・PRを担当することになったら、何から、どのように取り組めばよいのでしょうか。
今回お話をお聞きするのは、キャリアに特化したSNS「YOUTRUST」を運営するスタートアップ、株式会社YOUTRUSTで広報・PRを担当する緒方祥子さんです。
1人目の広報・PR担当として入社し、10か月めを迎える緒方さん。スタートアップで広報・PRを担当する上で大切にしている考え方や取り組みなどをPRライター柴田惠津子がインタビューします。
社外の広報・PR担当者との意見交換や、SNSでの情報収集からスタート
───広報・PR担当になった当初、まず何をしたのでしょうか。
緒方祥子(以下、緒方):他社の広報・PR担当の方とつながり、実務にも活かせる学びを得ることです。社内で1人目の広報・PR担当なので、何から取り組み、誰にアプローチをしたらよいのか、具体的なイメージを持ちづらかったんですよね。
そこで、Twitterで他社の広報・PR担当の方をフォローし、日々の発信や取り組みからヒントを得ていました。さらに、広報・PR関連のイベントに参加して登壇者や参加者の方とつながり、気になる方がいれば連絡して後日お茶をしながら、施策や課題の共有・相談などをして、広報・PRにおける具体的な行動のイメージを膨らませていきました。
───広報・PR業務としては、具体的にどのような施策に取り組みましたか。
緒方:社外との取り組みでは、メディアの方との関係を構築し、将来的な掲載や報道などにつなげていくための活動、メディアリレーションズに注力しました。会社として、サービスの認知拡大に向けた発信に取り組むべきタイミングでもあったからです。
つながりたいメディアの記者・担当者の方を探すために、類似する商品・サービスを展開する企業さんに関する記事を読み、メディアへの理解を深めた上で、お問い合わせフォームや知り合い経由、場合によってはSNSなどからファーストコンタクトを取ることからはじめました。
メディアの方との面会時には、YOUTRUSTのサービス紹介をまとめるだけでなく、自分自身にも興味を持っていただけるように、自作の自己紹介資料を事前に送付し、当日の会話をスムーズに進める工夫も行っています。
想いと冷静さをもって、広報・PRの価値を社内に伝えつづけよう
───社内に向けて取り組んでいることはありますか。
緒方:活動の進捗やメディアへの掲載実績の報告にとどまらず、広報・PRの意義や目的を定期的に全メンバーに共有しています。
基本的に、広報・PRは中長期的に、お客さまなどステークホルダーとの信頼関係を構築し、事業成長につなげる役割なので、すぐに利益や成果に直結しない場合もあります。だからこそ、社内のメンバーに広報・PRの価値を理解してもらうことが重要なんです。
人材が不足しがちなスタートアップにおいて、広報・PRの枠にとらわれず、必要とされる他業務にも積極的に協力・関与することで、社内のメンバーとの信頼関係を強固にしています。さまざまな業務を通して広報・PRへの理解促進、意見交換、情報収集を行うとともに、困ったときには頼ってもらえる存在になりたいと考えています。
───スタートアップの広報・PR担当の役割として、大切なことは何でしょうか。
緒方:経営者が持つ事業や社会への熱い想いをメッセージという形にして、的確に世の中に伝えていくことです。なので、経営層とも物怖じせずにコミュニケーションを取り、想いをふまえてベストな形で世の中に伝えていく力は、広報・PR担当として重要なスキルの1つだと考えます。
経営者の想いを、ただそのまま伝えるのではなく、時に冷静に自社を捉えながらも、「誰に、いつ、何を、どのように」伝えるのが事業や社会にとってよりよいか、市場の情勢や自社の事業計画・ロードマップもふまえて経営層と定期的にフィードバックしあい、内省していくことを大事にしています。
広報・PRの戦略と目標設定は、「短期的な数値」だけでなく「中長期の施策」との両輪がポイント
───広報・PRの計画はどのように立てていますか。
緒方:とくにスタートアップの場合は日々変化が多いので、あらかじめ広報・PR計画を立てつつも、柔軟に計画を更新して実行することを意識しています。
具体的には、社内共通の四半期の目標に沿い、社内のメンバーの日々の動きも把握しながら、広報・PR担当として優先すべき課題を都度、調整・判断していますね。
私の場合、プレスリリースの配信数やメディアへの掲載数など短期的な数値目標というよりも、広報・PR本来の役割であるステークホルダーとの信頼関係構築、企業・サービス価値の底上げにつなげるために何をすべきか、プロダクト・マーケティング・ビジネス・コーポレートそれぞれの部門の目標を達成するための行動を考えて中長期的な施策目標を設定するようにしています。
───外部のPR会社さんなどにサポートをお願いすることもありますか。
緒方:広報・PRのアドバイザーとして、数名の副業メンバーにサポートをお願いしています。
主に、プレスリリースの表現や切り口に関する相談など、プロジェクト単位でのリードやサポートをお願いすることが多いです。必要なタイミングで頼れる存在がいるのはとても心強いですね。
社外の方にサポートしていただく際は、自社として大切にする世界観、目指す方向性に共感していただけるかを確認しています。相互にとって価値観のズレを防ぎ、一過性の話題づくりのための活動にしないために重要なことなんです。
会社や商品・サービスの真価が正しく伝わる鍵は、嘘のない一貫したメッセージ
───会社やサービスに関する情報を発信する際、とくに重要なことは何でしょうか。
緒方:嘘をつかず、一貫性を持ってメッセージを伝えていくことです。私自身が書くプレスリリースはもちろん、メディアの方の原稿を確認する際も、自社として世に広めたいことが、本当に正しく伝わる形になっているか、日々真剣に向き合っています。このとき、伝えたいキーワードや言葉1つひとつ、小さなことの積み重ねが大切です。
たとえば、もともとYOUTRUSTは副業・転職サービスというイメージが多かったのですが、現在は、副業・転職に限らない「キャリアSNS」と認識されるようになりつつあります。また、人材流動性が低い日本型キャリアを変えていくサービスであり、そういった社会の実現を目指す企業であることを、丁寧に伝えるよう意識しています。
最近では、ユーザーさんのSNSのつぶやきで「キャリアSNS」という言葉を見ることが増えていて、手応えを感じつつありますね。
───これから広報・PR担当者を目指す方、担当しはじめたばかりの方に向けて、アドバイスをお願いします。
緒方:まずは自社そのものや商品・サービスの、好きなところをより多く見つけてみてください。私の場合、ユーザーさんの口コミや事例取材を通じて、「YOUTRUSTのここがよかった」という話をたくさん聞くことで、会社やサービス、社内のメンバーを愛する気持ちがさらに増し、仕事の原動力になっています。
また、情報への感度を高く持つことも重要ですよね。さまざまな商品、サービス、トレンドに対して好奇心を持ち、実際に利用してみるとリアルな使い心地などがわかり、自社の魅力も伝えやすくなっていきますよ。
インタビューを終えて
スタートアップでの広報・PRにゼロから取り組んできた緒方さんだからこその、リアルな考え方やアクションをお聞きでき、広報・PRにおける視野が広がりました。
1時間という短い取材時間のなかでも印象的だったのは、緒方さんが持つ、初対面でも距離を感じさせない、親しみやすいお人柄です。リモートワークが普及する現代において、画面上だけの1度の対面であっても、人を不安にさせず、良好な人間関係を構築できるコミュニケーションを、私もより大事にしたいと思います。
(取材・執筆:PRライター 柴田 惠津子 / 編集:PRライター 神田 祐佳)
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