ベンチャー1人目広報・PR担当の体験記。会社と社員の絆を深める社内報をつうじて、自分が「会社の1番のファン」になろう

はじめまして。株式会社Cannpass所属のPRライター星 緑です。「なにから始めたらよいかわからない」というのは、1人目の広報・PR担当の多くの方が抱える悩みかと思います。


私は、10年ほど営業職に従事し、うち2年間は複業のPRライターとして活動した後、人事系ベンチャーに1人目の広報・PR担当として入社をしました。


「なにから始めるか」は、事業や組織の状態によって異なりますが、私の場合、はじめに取り組んだのは社内報の発行でした。

企業における社内報の役割や、企画や検証のポイントを、私の経験をふまえてお伝えします!


経営課題によって、広報・PRが取り組む施策の優先順位は変わる

そもそもPRとは、かかわるステークホルダーと関係構築し、良好な関係性を築くことによって、事業を発展させていくこと。広報・PR担当がやるべきことは、その企業の事業や組織の状態によって変わります。


>>PRって何?という方は、こちらの記事もご参照くださいませ(Cannpass主催PR講座受講生レポート)


そのため、広報・PR施策の方向性を決める段階で、まず経営者に会社の課題を聞くのがおすすめです。


たとえば、直近の課題が「社内のコミュニケーションがうまくいかない」であれば社内広報かもしれないですし、「売上を上げたい」であればサービスや商品のPR施策、「採用に注力したい」なら採用広報……と、さまざまな選択肢があります。


まず、経営者やマネジメントに関わるメンバーとコミュニケーションをとり、組織の状態を把握した上で、取り組む領域を決めていきましょう。


目標がはっきりしないまま“とりあえず”で広報・PR活動をしてしまうことのないよう、「何のために、いつ、何をするか」を計画し実行していくのが、広報・PR担当に求められる役割

広報・PRは会社の経営と密接につながっている重要な活動なのです。経営陣が気づいていない課題の本質を見極めて施策を提案するぐらいの意識でいると、より価値を発揮できるようになりますよ。


リモート下かつ、成長中の組織における社内広報の役割

私が勤める会自社の場合は、社内広報の優先順位が高かったため、はじめに社内報の発行に取り組みました。


まず、組織の現状をお伝えすると、


・直近3年間で社員が1名→50名に急拡大

・創業当初より全員がフルリモートワーク

・社内コミュニケーションはオンラインが基本

・4〜5名で1チームの体制で運営

・チームを超えたつながりが少ない


といった状況でした。会社の事業成長・売上向上に向けて「基盤をととのえる」が目下の優先事項。サービスの体系化・平準化や体制の構築を進めていました。


そんななか、組織の課題としてあがっていたのが、主に以下の3つでした。


・社内メンバーへの会社ビジョンの浸透

・社内オンラインコミュニケーションでの遠慮や不安の解消

・社内向けの情報発信や共有の体系化


実際に「相手のことがわからない」「相手に伝わっていない」といった声も社内から聞こえていたのです。


もちろん、上記のような課題すべてを社内広報だけで解決するのは不可能ですよね。ただ、会社や一緒に働く社内メンバーを知ることこそ、お互いの安心や信頼を育むために必要なステップ。まずは社内の情報を可視化して整理し、届ける社内報を発行することにしました。


「知らない」「わからない」が社員の間で広がっている状態は会社や組織に対する不信感につながりかねません。リモートワークが浸透する今、成長中の組織においてはとくに、会社と従業員の絆“エンゲージメント”を高める施策のひとつとして、社内広報も検討してみるとよいのではないでしょうか。

理論と感情のバランスが、社員の心に届く社内報のポイント

ここからは、私が社内報を制作するときに、実際に何を考え行動したか共有させていただきます。


社内報に限らず、企画では「なんのためにやるか」の目的を設定することが基本ですよね。私の場合は、組織に前述した課題があったので、社内報は会社・組織理解を目的にしました。


・会社理解:会社のミッション・ビジョンの理解

・組織理解:各社内メンバーの性格・特性や、業務内容・役割の理解


この目的を前提に、社長や社員へのインタビューを実施し、社内報で発信することに。

私としても、社内にはすばらしい志をもって仕事をし、個性豊かで魅力的な人がいるにも関わらず、まったく知られていない、届いていないのがもったいない!と感じていた背景もあります。


もちろん、会社や組織を社員が理解するといった個別の目的だけでなく、その先のゴールは、社員のモチベーションや生産性向上による、売上向上や事業発展であるということも広報・PR担当として意識しておきたいところですね。


目的を設定したら社員に届けるために、最適な「テーマ」「ボリューム」「ツール」などを考え、PDCAを回して改善していきましょう。アンケートを行い、社内報を見た社員に意見や感想を聞くのもよいと思います。


>>伝わる文章にするための“PRライティング”について(Cannpass主催PR講座受講生レポート)


改善するための検証には、Google Analyticsなどのツールを活用するとデータの把握ができます。私の場合、Googleサイトで社内報を制作しましたが、Webの専門知識がなくても更新が手軽なのでおすすめです。


こうしたWeb解析ツールによって、客観的なデータを把握することができます。たとえば、PV数(ページを閲覧した数)や読了率(閲覧数のうち、どのくらいの人が記事を最後まで読んだのか)を見ると、どれくらいの社員が読んでくれているのか、社内報のどの部分に興味を持っているのかがわかり、改善のヒントが得られるんです。


こうした仮説・検証をくり返し、私の場合は、以下のような工夫をしていきました。


・文字数は2000〜3000字にし、1回の読了時間は5分ほどに抑える

・社員が知りたい情報を積極的に取り入れる

・まじめなテーマだけではなく、箸休めコンテンツを入れる

もちろん、客観的な指標も大事ですが、社員から感想をいただく働きかけも大事です。「どう伝わっているのか」「なにを感じているのか」など、数値化できないエンゲージメントの要素はPRパーソンとしても意識すべきポイントですね。

いただいた感想や意見には感謝を示す、共感する、気持ちを伝えるなど、社員とコミュニケーションを取りましょう。一緒に働くメンバーの人柄や価値観を理解するきっかけにもなります。


初回は上司や同僚に感想を募るための協力をお願いし、より多くの社員から感想をいただくための働きかけを行いました。


結果として多くの社員から「メンバーの仕事や人柄が伝わった」「社長の考えを知れてよかった」など、ポジティブな感想をいただくことができたので、今後もさらに改善をつづけていきたいと思っています。


社内広報を通じて、広報・PR担当者自身の自社理解が深まる

社内広報は社内向けの施策としてだけではなく、広報・PR担当自身がはじめに取り組むことで会社・組織理解を深められる、といったメリットがあります。


広報・PR担当者が、会社の「1番のファンになる」ことが大切なんですよね。


自身が会社や組織を理解できていなければ、当然社外にも伝えられません。社内報をつくる過程では、自社への理解もおのずと進みますし、社内のさまざまなメンバーとコミュニケーションを図るきっかけにもなります。

とくに広報・PR担当は、社内のメンバーと連携し、協力をあおぐ業務が多いため、社内報をきっかけに一度コミュニケーションを取っておくと、その後の業務をスムーズに進める一助にもなるんです。


「なにから始めたらよいかわからない」という悩みを抱える、ベンチャーの1人目広報・PR担当の方に、社内広報も取り組みのひとつと知っていただけるとうれしいです。


(執筆:PRライター 星 緑)