時代に左右されずリピーターを絶やさないお店づくりとは。時代に合わせて変化していくことがPRのコツ〜株式会社ワッショイ代表取締役 森悠介さん〜

経営をつづけていくうえで、より多くのお客さまに自社のファンやリピーターになっていただくことは大切です。どうすればファンを増やすことができるのかと悩む方もいるのではないでしょうか。


今回お話をお伺いしたのは、大阪で多くのお客さまから愛されリピーターが集う飲食店を4店舗経営されている株式会社ワッショイ代表取締役の森悠介さん

飲食店は開業率も廃業率も高い業態ですが、新型コロナウイルスの自粛が明けてからも売り上げが昨年度を上回っている店舗もあったそう。


そんな森さんに飲食店経営で活きるSNS活用方法、多くの人に愛されるお店作りについて、PRライターのKonoha Shinadaがお伺いしました。


時代とお店に合ったPRでファンを増やす

───お客さまを絶やさないお店をつくるために、これまでどのようなPRの取り組みをしてきましたか?

森悠介(以下、森):だれでもいいから多くの人を呼び込むというよりも、自分たちのお店に合ったお客さま層に向けて直接アプローチするということをしてきました。


これまで、4店舗とも広告系のグルメサイトに掲載していた時期もあったのですが、あまり費用対効果を感じることができずにいました。また、サイトに掲載して、多くの人へ向けて発信をした場合、表面上は誰とでも簡単にマッチングできる反面、誰にも深く愛されないお店になってしまうのではと思ったんです。

そこでサイトに掲載することをやめ、自分たちが届けたい相手へ直接アプローチすることができるインスタグラムを中心に、SNSで発信をするようにしたり、店内広告やチラシをつくったりしました。


また、来てくださったお客さま1人ひとりと毎回、直接話すようにしていました。いまでは多くのお客さまが友達を連れて再来店してくださいますし、お1人でも来店してくださるお客さまもいらっしゃいます。

「飲食店はこうでなければいけない」と決めつけ固執してしまうのではなく、これといった正解はないからこそ、どこにお金をかけてどんな人にアプローチしたいのか、自分なりに考えることが大切だと考えます。


───届けたいお客さまへ届けるために、SNSをどのように活用されていますか?

森:店の大きさや平均客単価、内装などによって戦略を考えます。

たとえば、高級路線でいくのか1人でも気軽に来られるようなお店なのか?戦略を考えます。


僕のお店のひとつは、1人でも気軽に来られるような立ち食い居酒屋にしたいと考えました。そこで、来てくださったお客さまの写真を撮らせていただきSNSにアップすることで、お店の雰囲気を伝えることにしました。

そうすることでお客さまとSNSでつながることもでき、イベントをやる際に情報を見つけてもらいやすくなるんです。それを、お客さまがお店のメンションをつけて拡散してくださることもあります。


いまの時代は簡単に情報を取得でき、自分たちが気になるお店を自力で探すことができます。なので、時代の変化に合わせて自分たちも常に変化していくことでお客さまと直接つながることが可能になります。


心からの接客をすることが、リピーターを増やすカギ

───PRにおいて大切なことはなんだとお考えでしょうか?

森:儲け主義ではなく、思いやりを持って自然体でいることです。

個人店だからこそ決まり切った接客やルールというものにとらわれず、自然体でお客さまと接することができます。一昔前のような過度の接客や義務感のある接客、マニュアル通りの接客は、思いやりでやっていることではなくなってきます。お客さまには自分のありのままで接することを大事にしています。


みんな一緒といった兵隊型のような接客ではなく人間味のあるあたたかい接客をすることでお客さまが居心地がよい、たのしいと思ってもらえるような空間をつくることができ、お客さまとスタッフといった関係ではない関係を構築することが、お店のリピーターやファンづくりにつながっているのではと思います。


───居心地のよい空間をつくるうえで、他にも気をつけていることはありますか?

森:スタッフも自身が心からの接客をできるよう、私自身がまずは一番楽しむことを心がけています。

僕のお店のスタッフは全員、元はお客さまでした。何十万円もかけて求人をかけていた時期もあったのですが、現在はアルバイトの求人をかけていません。とりあえず働こうと思っている人と、お客さまとして体感した上で「おもしろいから働きたい」と思っている人とではモチベーションが違うと気づいたんです。


お店を好きになってくれた人と働く方が、元からお客さまとして店との間で信頼関係ができているので、お互い楽しく働くことができます。

そして、楽しそうに働くスタッフの接客は決まりきった形式的なものではなく、自然体なものになるので、お客さまも心地よく過ごせるお店になっていきます。


正解は1つではない。自社が自然体でいられるPRを

───これからPRを始めようと考える読者にアドバイスをお願いします。

森:型にはまったPRをするだけではなく、自分なりのPRについて考えることが必要ではないでしょうか。いまは多様性あふれる時代であり、それぞれのお店が違う状況下にあるので、正解はひとつではないと思います。


また、競争しなければ、No.1にならなければと考えると自分の気持ちが窮屈にり、楽しむことができなくなってしまいます。自分や自社がどうなりたいかという理想を描き、スタッフやお客さまと共有することで、みんな一緒に未来が楽しみと思えるようになります。


時代の変化は早く、今日正しいと思っていることが明後日には変わっていることもあります。その変化に対応し、行動することはPRを行う上でも大切です。今成功していても、2年後どうなっているかはわからないですよね。これから先も早い時代の変化に対応することが必要となってくるでしょう。


───PRにおいて、これからどのようなことを始めようと考えていますか?

森:ワッショイの理念は「個々の可能性を高め合い、切磋琢磨しながら日々成長していく集団」なので、飲食業という垣根を越えて世の中に新しい感動や喜びを創造していけたらと考えています。


今、僕はスタッフやお店の常連さんたちと一緒に「わっしょい釣りクラブ」という名前でYouTubeをやっており、釣りに関する動画をアップしています。YouTubeをやっている人はたくさんいますが、飲食店を経営して、YouTubeで全く違うコンテンツを配信している人は少ないと思います。

他にも、僕が歌ってCDやミュージックビデオを作ってみるのもおもしろそうだなと考えています。これまでの経験や仕事にとらわれず、自然に湧き上がってきた感情から、おもしろくて新しいことに挑戦したいです。


まずは自分が楽しみ、自然体でいることで、お客さまやスタッフという垣根を越えてみんなが仲間のような存在になっていく、それが愛されるお店づくりにつながるのではないでしょうか。


インタビューを終えて

今回インタビューを担当させていただきました、Konoha Shinadaです。

取材を通して、ターゲット設定やお店のブランディングにより愛されるお店ができることがわかりました。

また、ルールや戦略などビジネスのノウハウだけではなく、人間としての感覚的なことも、PRにおいて大切であると改めて気付かされました。


自然体で上手なPRを行われている森さんは、創造力が豊かで、ご自身だけではなく、周りにも楽しい・おもしろいを共有しようと行動される、思いやりに溢れた方です。そのような人間性も、愛されるお店づくりにつながっていると感じました。

私自身も、思いやりの心を、また自分の頭の中にある「おもしろそう、興味がある」を見逃さず、行動に移していきたいです。


(取材・執筆:PRライター Konoha Shinada / 編集:PRライター Mina Nagashima)


<関連情報>

・株式会社ワッショイ

http://www.chocotto-2009.com/about/